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2025/07/29 不動産相続における「単独相続」と「共有相続」について
不動産相続における「単独相続」と「共有相続」の法的・実務的解説
相続が発生した際に、不動産をどのように承継するかは、遺産分割協議や今後の資産運用・処分に大きく関わってきます。特に、「単独相続」と「共有相続」には、それぞれに法的・実務的なメリットとデメリットが存在します。本記事では、不動産の相続形態について専門的な観点から詳しく解説します。
1. 単独相続とは
単独相続とは、遺産分割協議または遺言により、特定の相続人が不動産を単独所有者として相続取得する形態です。
▼ 単独相続の主なケース
遺言書によって不動産を特定の相続人に遺贈
他の相続人が代償分割を受け入れて単独相続を了承
他に取得すべき不動産がない相続人が現金等で公平を図る
▼ 法的・実務的メリット
所有権が明確になり、名義変更(相続登記)がスムーズ。
売却・賃貸・担保設定等を所有者単独で実行可能。
固定資産税・維持管理の判断が一元化される。
▼ 留意点
他の相続人には代償金の支払いが求められることが多く、資金的な負担が生じる。
他の相続人との公平性に配慮しなければ、遺留分侵害額請求の対象になることもある。
2. 共有相続とは
共有相続とは、不動産を相続人複数人で法定相続分または協議による割合で共有持分として取得する形態です。民法第249条に基づき、「各共有者はその持分に応じて権利を有する」と定められています。
▼ 共有相続の典型的な背景
現物分割が困難な場合(例:土地や建物が一筆・一棟しかない)
相続人間で明確な合意が得られない場合の暫定処置
遺産の総額が大きく、現金化せずに権利を保有したい場合
▼ 法的・実務的デメリット
不動産の処分・変更行為(売却・建替え・担保設定など)には原則として全共有者の同意が必要(民法第251条)。
持分割合の違いにかかわらず管理については全員の協議が求められ、調整が困難。
将来的に相続人が死亡するとさらに数次相続が発生し、共有者が増加して収拾困難になることも。
▼ 注意すべき法的リスク
共有物分割請求(民法第256条)により、共有者の1人が裁判所に対し強制的に共有関係を解消する訴えを提起できる。
管理費・固定資産税等の負担義務は、各共有者に分担義務があるが、未払いによる紛争が起こりやすい。
3. 実務上の選択ポイント
観点 単独相続 共有相続
不動産の利用・処分 スムーズ(単独で可能) 同意が必要で制限あり
相続手続きの煩雑さ やや複雑(代償分割等) 簡易だが後の問題が複雑化しやすい
相続後のトラブル可能性 低い(条件付き) 高い(意見不一致・数次相続)
相続税評価・申告 所有者ベースで明確 持分ごとに評価・申告が必要
4. 結論:将来の「出口」を見据えた選択を
不動産相続は、相続時点の公平性だけでなく、相続後の管理・処分・税務上の観点を踏まえて判断することが極めて重要です。たとえば、今後売却や賃貸、建替えを視野に入れるなら単独相続の方が実務上有利なケースが多くなります。
一方、資金的に代償分割が難しい場合や、当面不動産を利用する予定がない場合などは、共有相続を選ぶことも一つの現実的選択です。しかし、共有状態を長期化させると、後々の持分整理やトラブルに発展しやすいため、将来的な共有解消(持分売却・共有物分割)も見据えておくことが必要です。
相続対策としてのアドバイス
遺言書作成によって、単独相続や代償分割を明示することで、相続時の混乱を防止できます。
事前に家族で共有不動産の将来方針を話し合っておくことが、トラブル回避に有効です。
複雑な相続になる場合は、司法書士・税理士・弁護士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。
